仏教の「唯識」と合氣道「唯心」会
松村寧雄先生は、両界曼荼羅を次のように教えてくださいました。
- 胎蔵界曼荼羅=宇宙の本質「空」(万物は固定的な実体をもたない)
- 金剛界曼荼羅=心の本質「唯識」(世界は心のはたらきとして現れる)
この二つは対立ではなく“両輪”。
私は2007年からマンダラチャート学会の活動を続けていました。そこで、ウィリアム・リードさんと出会い、合氣道唯心会の稽古に誘っていただきました。最初の稽古から、会主である丸山維敏先生の体現する合氣に魅了されました。
1. 「唯識三十頌」の骨子
世界は八識のはたらきとして立ち上がる。
- 前五識(眼耳鼻舌身):五感の認識
- 第六意識:分別・思考・判断
- 第七末那識(マナ):〈我〉への執着・自己中心のクセ
- 第八阿頼耶識(アーラヤ):種子(行為・言葉・感情の痕跡)を貯蔵する“倉庫”
七転識(第六+第七)が刻む薫習がアーラヤに蓄えられ、人格と環境として再出現する──これがアーラヤ識縁起。
したこと・言ったこと・思いグセが、未来の「私と世界」になって返ってくる。
2. 三性・三無性(実践へのコンパス)
- 遍計所執性:思い込みで“ある”と握る(縄を蛇と見る錯覚)
- 依他起性:縁によって起こる流動(八識+心所の相互作用)
- 円成実性:前二者が空と見抜かれたとき顕れる真実相(真如)
実務では、
- 思い込みを外す(遍計を点検)
- 縁を設計する(言葉・反復・関わる場)
- 本質に沿う(無理のない自然体)
3. 中核となる二つの心
第七マナ識:自己執着の自動思考
常に我癡・我見・我慢・我愛の四煩悩を同伴。
現場での姿:私怨・自己正当化・過小/過大評価。
第八アーラヤ識:智慧の倉庫
言葉づかい・反復・感情の扱いが種子となり、将来の人格・環境に反映される。
種子は①言葉の精度 ②小さな反復 ③縁
4. 合氣道唯心会とのシンクロ
私が稽古で体感しているのは、「心が先、形が後」という事実です。作意(意を作る)→受(感じる)→想(像を結ぶ)→思(決める)の流れが整うと、相手との関係に無理のない一致が起こる。これはまさに依他起の調律です。
「合氣道唯心会の心得」
吾れとは心である。
心に善いことを思えば、善いことが起きる。
心に悪いことを思えば、悪いことが起きる。
故に、たとえ身に病ありといえども、心まで病ますまい。
たとえ運命に非なるものありといえども、心まで悩ますまい。
常に心に思うことは、「よろこび」と「感謝」と「希望」である。
そして「明るい」「楽天的な」心をもって、今日一日を生き抜こう。
大丈夫! なんとかなる。
唯識の翻訳
- 「善いことを思う」=善の心所を選び、薫習として植える
- 「心まで病ますまい」=遍計(思い込み)を外し、依他起を整える
- 「大丈夫!なんとかなる」=円成実性(本質)への信が行為を軽やかにする
投稿者プロフィール
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1967年千葉県松戸市生まれ。青山学院大学卒業後、大和証券系VC、ワタミ、CCCを経て31歳で株式会社ジップを創業。22年間ブックオフ加盟店4店舗を運営し、2020年事業譲渡後、株式会社本領として新たなスタートを切る。
現在はマンダラチャート認定コーチとして、仏陀の智慧を経営に活かす活動や、合氣道の指導、経営戦略・人生論の研究を続けている。noteやSNSで日々の学びと気づきを発信している。
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