1.仏陀の最後の言葉 ― 「諸行無常」

「では、修行僧たちよ。汝たちに告げる。
もろもろの現象は移ろいゆく。怠らず努めよ。」
この言葉は、仏陀が入滅の直前に弟子たちへ告げた最後の教えとして伝わるものです。
サンスクリットでは「諸行無常(anicca)」、すなわちこの世界のすべては移ろいゆくという真理。
この言葉には、単なる無常観ではなく、「移ろいゆくからこそ、怠らず努めよ」という強いメッセージが込められています。
変化する世界の中でこそ、真実に向かって努力を続けること──それが「最高善」への道です。
松村寧雄先生はこの無常の教えを、「努力の根拠」として説かれます。
すべてが変化し続けるからこそ、私たちは今の一瞬を真剣に生きる。

そこにこそ、真実の修行があり、人生の意味があるのです。

2.法燈明 ― 「法」をよりどころとせよ

「法を灯明(島)とし、法をよりどころにするがよい。
他のものに頼ってはならない。」
これもまた、仏陀の遺言として『遺教経(ゆいきょうぎょう)』に記されています。
「法(ダルマ)」とは、宇宙の理(ことわり)、真理の道。
松村寧雄先生は、この教えを「真理に立脚して生きる覚悟」として解かれます。
世の中の価値観や他人の評価に揺らされることなく、
「法」という普遍的な軸を心に灯すこと。
その灯火(ともしび)は、外から与えられるものではなく、
内なる心の奥底に静かにともるものです。
法をよりどころに生きることは、

“流されない生き方”の始まりです。

3.自灯明 ― 「自らを灯明とせよ」

「汝たちは、自分自身を灯明(島)とし、自分自身をよりどころとせよ。
他のものに頼ってはいけない。」
仏陀は、私たちに「自らの中に真理の光を見よ」と伝えています。
他者や社会に依存するのではなく、
自らの内なる良心・叡智・信念を道標とせよ、という教えです。
この「自灯明(じとうみょう)」の精神は、マンダラ発想にも通じています。
人生8大分野(健康・仕事・経済・家庭・社会・人格・学習・趣味)をマンダラに展開し、
それぞれの領域で「自らを灯す」テーマを立てていく。
そして、人生100年計画では、年代ごとに人生をマンダラで俯瞰することで、
「他に頼らず、自らの軸で生きる力」を育てることができます。

まさに、自灯明とは「マンダラ的人生」の根幹にある思想です。

4.無常と灯明 ― 現代を生きる私たちへ

現代社会は変化のスピードが激しく、
無常の波に翻弄されやすい時代です。
しかし、諸行無常の智慧は「変化を恐れず、変化を生きよ」と語ります。
法燈明は「普遍の真理をよりどころにせよ」と示し、
自灯明は「その真理を自分の内に見出せ」と導きます。
松村寧雄先生の講義では、これらの教えが単なる知識ではなく、日常の実践として説かれます。
私たちは学び、祈り、行動する中で、

一人ひとりが“灯明”そのものとなっていくのです。

5.結び ― 自らを照らし、他を照らす

「もろもろの現象は移ろいゆく。怠らず努めよ。」
「自らを灯明とし、法を灯明とせよ。」
この二つの教えは、
変わりゆく世界を生き抜くための仏陀の遺言であり、
時代を越えて響く魂の羅針盤です。
マンダラを描きながら、
私たちは「自分という灯火」を確認し、
それを静かに、しかし確かに燃やしていく。
その光が、いつか他者の心を照らす灯となるように。
無常の中にこそ、永遠の光が宿っています。

投稿者プロフィール

本領亮一
1967年千葉県松戸市生まれ。青山学院大学卒業後、大和証券系VC、ワタミ、CCCを経て31歳で株式会社ジップを創業。22年間ブックオフ加盟店4店舗を運営し、2020年事業譲渡後、株式会社本領として新たなスタートを切る。
現在はマンダラチャート認定コーチとして、仏陀の智慧を経営に活かす活動や、合氣道の指導、経営戦略・人生論の研究を続けている。noteやSNSで日々の学びと気づきを発信している。