私は、仕事の“現場”が大好きです。
お客様に喜んでいただくために、多くのスタッフが同じ目的に向かって懸命に働く姿。
その姿を見ていると、心からの喜びが湧いてきます。
一人ひとりが自分の役割を楽しみながら果たしている現場は、まさに「生きた組織」そのものです。
松村寧雄先生も、事業経営において技術力・販売力・資金力・人材の重要性を説かれていますが、最も根本にあるべきものは「正しい経営理念」だと述べられています。
その理念は、社会の理法や自然の摂理に立脚し、時代や場所を超えて通用する普遍的なもの──つまり、どんなときもぶれない“中心軸”なのです。
「現場がすべて」だった私が見落としていたもの
かつての私は、「現場こそすべて」と思っていました。
そのため、つい現場に深く入り込みすぎてしまい、店長や責任者がいるにもかかわらず、細部にまで口を出し、手を出してしまう。
その結果、かえってスタッフが動きづらくなり、現場が混乱することもありました。
そして何より、経営者として本来果たすべき「未来を描く仕事」「全体を俯瞰する視点」が、いつのまにか後回しになっていたのです。
その経験を通して、私はようやく気づきました。
現場を大切に思うなら、現場に“立ちすぎて”はいけない。
現場を守り、育てるためには、未来の会社の姿を構想し、それを形にしていくことこそが経営者の仕事だと。
経営者とは“中心軸”である──松村寧雄先生の教え
そんな私に、松村寧雄先生はある日、こう言葉をかけてくださいました。
「経営者は、時計の“中心軸”なんだよ。
軸がぶれないようにして、みんなが安心して動けるようにする。
だから、マンダラの“中心”から、全体と部分とその関係性を見ていかなくちゃいけない」
この言葉は、私の胸に深く響きました。
経営者とは、動きすぎてはいけない。
経営者とは、中心にいて「在り方」で示す存在である。
松村先生は、正しい経営理念が経営者に信念的な強さを与え、力強い経営を可能にすると語られています。
その理念の根本には、自然の摂理や普遍的な真理に根ざした人生観・世界観があるのです。
マンダラの“中心”に立ち返る
それ以来、私はマンダラチャートの中心に立ち返ることを心がけました。
経営者として大切なのは、方向性を示し、期日を定めること。
あとは、スタッフが自らの力で動けるよう、私は『時計盤の中心』に徹すると決めたのです。
松村先生は、マンダラチャートを「全体と部分と関係性」を捉えるツールであり、経営を映像的に表現する装置だと語られています。
マンダラ思考は、人生とビジネスを豊かにするための智慧なのです。
唯識──心の質が経営の質を決める
マンダラチャートの中心にある「自己の在り方」は、組織全体の在り方に直結します。
これは、仏教の「唯識(ゆいしき)」の思想とも深くつながっています。
唯識では、私たちが直面する困難や障害は、心の妄想の投影にすぎないと説かれます。
つまり、経営の質は、経営者自身の“心の質”によって決まるということです。
マンダラの中心にある「無垢意識(むくいしき)」─清らかな心の状態が、組織の方向性を定め、行動を正していく力になります。
経営者自身が「無垢意識」に目覚めること。
それは、即身成仏とも言える“目覚めた生き方”への道なのです。
「空」の智慧と、八正道の実践
松村先生は、悟りとは特別なものではなく、日常生活のなかにあると語られました。
とくに「八正道」は、悟りへと至る八つの実践の道です。
なかでも「正見」は、物事をありのままに見る力。
先入観や思い込みから自由になり、真実を観察する姿勢です。
そして、仏教の核心である「空(くう)」の智慧は、
すべては関係性の中にあり、固定された実体は存在しないという真理を示します。
この「空」の世界観を持つことで、私たちはどんな難問にも柔軟に向き合い、解決へと導くことができる。
それはまさに、自己固有の人生を歩むための智慧なのです。
現場を愛し、未来を創る──理念を軸にした経営へ
現場を愛するからこそ、現場に立ちすぎない。
現場を守るために、経営者は“未来を創る”仕事に徹する。
そのための軸となるのが、マンダラチャートの中心にある「自己の在り方」です。
マンダラの中心に立ち返りながら、自分という“軸”を見失うことなく、これからも、私らしい生き方を探す旅を続けます。
投稿者プロフィール

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1967年千葉県松戸市生まれ。青山学院大学卒業後、大和証券系VC、ワタミ、CCCを経て31歳で株式会社ジップを創業。22年間ブックオフ加盟店4店舗を運営し、2020年事業譲渡後、株式会社本領として新たなスタートを切る。
現在はマンダラチャート認定コーチとして、仏陀の智慧を経営に活かす活動や、合氣道の指導、経営戦略・人生論の研究を続けている。noteやSNSで日々の学びと気づきを発信している。
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