— マンダラチャートの視点から“本来の自己”に向き合う —

「父母未生以前汝 本来面目如何(ふぼみしょういぜんのなんじがほんらいのめんもくいかん)」

この言葉をご存知でしょうか?

これは禅宗で用いられる有名な公案の一つです。

「未生」とは何か、「本来面目」とは何か──その問いは、私たちの“本当の自己”に迫るものです。

◆ 公案の問い:「本来の面目」とは?

直訳すると、

「あなたの父と母が生まれる以前の、あなた自身の本当の面目とは何か?」

ここでいう“面目”とは、外見や人格、性格を指すのではありません。

むしろそれらをすべて脱ぎ去ったあとに残る、根源的な存在。

名前も、性別も、立場も、記憶も、思想も──

そうした“後付け”をすべて手放したとき、なお残るもの。

それこそが「本来面目」、すなわち“本当のあなた”です。

◆ 禅の修行者に向けた「理屈で解けない問い」

公案は「理屈では解けない問い」として、思索や体験の中で悟りを促すものです。

この問いを投げかけたのは、中国唐代の禅僧・趙州従諗(じょうしゅう じゅうしん)。

ある修行者は答えずに、一歩だけ前に踏み出しました。

その姿を見た師は、「それこそが悟りそのものだ」と受け取ったと伝えられています。

言葉ではなく、行動や存在そのものに答えが宿る──それが公案の本質です。

◆ マンダラチャート的に見た「問いの構造」

マンダラチャートは「8分野」を通じて自己を客観的に見つめ、多面的に人生を捉えます。

しかし、表層の役割や行動だけを整理しても、深い人生の方向性には届きません。

この公案は、マンダラチャートでいう「中心(核)」を問うもの。

健康・仕事・経済・家庭・社会・人格・学習・趣味といった分野を突き動かす源泉──

つまり、「あなたが何者として、この世に生まれてきたのか」という問いなのです。

◆ あなたの「本来面目」とは何か?

この問いに向き合うには、一度すべての肩書きや役割を横に置く必要があります。

  • 会社での役職
  • 親としての役割
  • 過去の成功や失敗
  • 性格や信念

これらはすべて「後付け」であり、「本来面目」ではありません。

裸の魂としての「私」とは何か?

この問いを真摯に見つめること。

それが、マンダラチャートの中心に光を灯す第一歩になるのです。

◆ 魂の面目を取り戻す旅

私自身、この問いを「本領とは何か?」という旅と重ねています。

「本領を発揮する」とは、技術や結果を指すのではなく、魂の本性を生きること。

「本来面目」とは、他者に評価される顔ではなく、宇宙と響き合う命の音色のようなもの。

あなたは、どんな音色を奏でていますか?

◆ 実践のヒント:問いを持ち続ける

この問いに明確な答えは必要ありません。

大切なのは、問い続けること。

マンダラチャートで日々のアクションや振り返りを行うとき、

「私の本来面目はどこに現れているのか?」という視点を添えてみましょう。

それは、日常の選択に魂の軸を差し込む行為となります。

◆ おわりに:あなたのマンダラの中心は何か?

マンダラチャートは単なる目標達成ツールではありません。

「私とは何か?」という問いを生きるための羅針盤です。

禅の公案が示すように、

「私たちは、そもそも何者だったのか?」

この根源的な問いを持ち続けることが、

本当の意味での「本領発揮」へと導いてくれるのだと、私は信じています。

投稿者プロフィール

本領亮一
1967年千葉県松戸市生まれ。青山学院大学卒業後、大和証券系VC、ワタミ、CCCを経て31歳で株式会社ジップを創業。22年間ブックオフ加盟店4店舗を運営し、2020年事業譲渡後、株式会社本領として新たなスタートを切る。
現在はマンダラチャート認定コーチとして、仏陀の智慧を経営に活かす活動や、合氣道の指導、経営戦略・人生論の研究を続けている。noteやSNSで日々の学びと気づきを発信している。