◆ 仏陀の教えは生きている
私が今、こうして人生や経営の実践に仏教を生かすことができるのは、松村寧雄先生が遺された「マンダラ思考」のおかげです。
松村先生は、仏教を単なる信仰や宗教的な枠にとどめず、人生と経営に活かせる“智慧の体系”として再構築しました。
特に「四つ葉のクローバー」に象徴される根本仏教の構造(四諦、中道、五蘊無我、十二縁起)と八正道の実践体系は、今もなお多くの同朋に影響を与えています。
先生がご逝去された今、その教えは「仏陀の智慧を生かす経営研究会」として、太田勝久先生を中心として研究され続けています。2025年5月16日に「中道・八正道、五蘊無我」をテーマに開催された会の模様を共有いたします。今回も20名を超える参加者が深い学びを得て、相互に啓発する貴重な時間となりました。
◆ 中道とは「道に中(あた)る」こと
「中道」とは、快楽でも苦行でもない、その中間に位置する“調和の道”であるとよく言われますが、「道に中(あた)る」という意味も持ち合わせています。
つまり、それは今の自分にとって最も適した生き方、あるいは状況に応じて最適な選択をするために、自分だけの人生の道に体当たりし続ける。その上で、極端を排し、実践的な智慧としての「中道」を得てゆく。そのために八正道を身につける。
◆ 八正道の実践的解釈と応用
松村寧雄先生は八正道を、以下のように経営や人生に落とし込んでくださいました。
- 正見:自他の立場を超えた客観的視野。空。理念の明確化。
- 正思:「心こそ万物の創造主」であるという自覚。考え方。
- 正語:対立でなく融和を生む、誠実なコミュニケーション。言葉。
- 正業:社会に資する事業活動。行動、行為。
- 正命:言葉・行為・心の習慣を整える。早起き・学習・修練。
- 正精進:使命に基づいた努力と継続。共存共栄の視座。
- 正念:今ここに集中し、長期ビジョンと宇宙的視野をもつ。
- 正定:心を鎮め、創造力を開き、変化に応じて生きる。
◆ 五蘊無我と経営
「五蘊無我」とは、肉体(色)と心(受・想・行・識)すら実体がないという仏教の核心的思想です。
これは「自分自身」にとらわれすぎず、柔軟に現実と向き合うことの大切さを示しています。固定観念を手放し、状況に応じた判断を下す経営判断にも通じます。
◆ 松村寧雄先生の体系と実践段階
仏陀の人生を分析すると、実践は次の4段階に分けられます:
- 常識開発(生活習慣の改善)
- ヨガ開発(精神集中の鍛錬)
- 苦行開発(自己超越の試み)
- 直観開発(直感的判断)
また、人生の発達段階として
- 他者依存(導かれる段階)
- 自己依存(自ら鍛える段階)
- 相互依存(全体との一体化)
という三段階があります。
これもまた、組織や経営者の成長段階と見事に重なります。
◆ 参加者の声と学び
グループディスカッションでは、「中道とは真ん中ではなく“調和”」であること、「素直さこそが変容への鍵」であることが印象的な気づきとして共有されました。「仏教をシステムとして捉え、それを実際の人生や経営に応用する」というアプローチが、参加者の間で深く共感を呼びました。
◆ おわりに
仏陀の智慧は、今も生きている。
それは信仰の対象ではなく、現代を生きる私たちの行動原理であり、経営の道しるべです。
松村寧雄先生の遺されたマンダラ思考は、その仏陀の智慧を私たちの「日常」と「事業」にまで引き下ろしてくれました。
この研究会は、その教えを実践に生かす場として、確かに機能し続けています。

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